国重要無形文化財 遠山郷の霜月祭り

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和田の諏訪神社

様式

wada001和田の霜月祭りは、飯田市南信濃和田にある、旧和田村社・諏訪神社の祭りです。
この神社は承久(じょうきゅう)元年(1219)に再建されたと伝わり、古くから遠山谷にまつられた諏訪神 社であったと推測されています。
毎年8月下旬には御射山祭り(みさやままつり)、7年に1度の申(さる)・寅(とら)年には御柱祭(おんばしらさい)がおこなわれます。

祭神は建御名方命(たてみなかたのみこと)。
社殿は、神明造(しんめいづくり)の本殿の前面に、切妻造(きりづまづくり)・妻入(つまいり)の拝殿(はいでん)・舞殿(まいでん)が続いています。
板の間となる舞殿の中央には四角い炉が設けられ、鉄の五徳(ごとく)に湯釜1口が 据えつけられます。
湯釜の真上には「湯桁(ゆげた)」とよばれる四角い木枠(きわく)が吊るされ、それに張り渡した注連縄(しめなわ)にはさまざまな切り紙が飾りつけられます。

wada002そのうち、「大千道(おおぢみち)」は神々が天上から降りる道とされ、頂部には塩と米の入った包みが吊されます。
注連縄の各辺には、「小千道 (こちみち)」「八つ橋」「十六のひいな」「八流の旗(やながれのはた)」 が付き、いずれも九字(くじ)をあらわす切り込みなどが刻まれています。
また、東隅だけに「湯男(ゆおとこ)」とよぶ飾りがつきますが、これにはレンズ形の日月と、九字をあらわす縦横4本・5本の切り抜きが計114あり、その数は人間が生きられる年齢をあらわすとも、「百通し」となって願がかなう数ともいわれます。さらに、これら飾りの総数は61通りとなり、その数は還暦(かんれき)(十干十二支(じっかんじゅうにし)の暦(こよみ)が一周して新たな出発となる数)、すなわち「よみがえり」を 意味しています。

東隅に吊される湯男は、太夫が「立場」とする西隅と対面しています。ここにも、夜明けとともに新たな太陽を迎えるという霜月祭りの意味が込められているのでしょう。

wada004遠山氏の系図

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和田の式次第

和田の祭りは、前日に準備をして、当日朝から、湯立ての水を迎える「浜水迎え」、面を八重河内八幡社から迎える「面迎え」がおこなわれます。
そして、神職による祭典を終えると、いよいよ「本祭り(古典祭)」の始まりです。

まず「湯の式」で祭場を御神楽歌によって清め、神々のやってくる道を開いてから、祭場を踏み固める「踏みならしの舞」が舞われます。
そして、湯釜を開く「湯開き」があり、最初の湯立て「一の湯」となります。この湯立ては平年は12人、閏うるうどし 年は13人によっておこなわれます。
この湯立ての後に、扇と剣による「下堂祓い(げどうばらい)」の四つ舞があります。
つづく「二の湯」は6人による湯立てで、その後に「神子の湯(かみこのゆ)」がおこなわれますが、これは神に命を助けられた者が神の子に生まれ変わって一生涯の奉仕を誓う儀式で、遠山でも和田と中郷だけに伝えられています。
最後の「鎮めの湯」は12人または13人による湯立てで、あらゆる神々・眷属(けんぞく)に湯を捧げます。

中折紙を宙に舞わせて面神を降ろす「やおとめ」ののち、「面(おもて)」となって面神が続々と登場します。
「神送り」をしたのち、それでも祭場に残る神々や精霊(せいれい)を追い払うため、 最後に「かす舞」「ひいな降ろし」「金剣(かなつるぎ)の舞」が力強く舞われます。

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  • wada008 水の王
  • wada009 村内の神々
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面(おもて)

和田諏訪神社の霜月祭りには、41面の面(おもて)が登場します。これらの面は普段は八重河内・八幡社に保管されていて、和田では祭り前日に「面迎え」をしてきます。

面は、水の王・火の王、じいさ・ばあさ、猿からなる「役面(やくめん )」 5面のほか、遠山氏の御霊をかたどった7面、その他、村内の各地にまつられる神々の面からなります。
これらの面が作られたのは江戸時代の前半期から明治時代にかけてで、八重河内の八幡社の面に周辺の神社の面を集めたものといわれます。面の登場する順序はつぎのとおりです。

水の王

5周。
湯をしずめて、素手で湯を周囲にはねかけます。
1周目:腰まわり、2周目:湯伏せ、3周目:かけ真似、4周目:湯切り、5周目:腰まわり。

火の王

3周。
水の王や他の面と同様に、腰に両手をあてて、足を大きく踏み出しては、のけぞるようにして歩きます。
北斗七星(ほくとしちせい)を踏む歩みと考えられます。

諏訪明神・遠山氏の御霊・村内の祭神

神社の祭神面を先頭に、遠山氏の御霊や村内にまつられる神々の面が、火の王と同じ歩みで3周します。
かつては「61歩踏んで帰れ」といわれました。61とは還暦(かんれき)すなわち「よみがえり」を意味します。

ばあさ・じいさ

ばあさはションベンバアサや天鈿女命(あめのうずめのみこと)、じいさは神太夫(かんだゆう)ともよばれます。
ばあさは手に笹を束ねた湯タブサを持って登場し、村人を祓って歩きます。遅れて登場したじいさは、半周したところで役人に呼び止められ、問答の末に上衣も刀も取り上げられ、ばあさを抱くようにして元来た道を帰ります。

最後に登場する猿は、5周半します。
1周目は各隅で7回ずつ3回、2周目は5回ずつ3回、3周目は3回ずつ3回飛び上がります。
つまり七五三に舞うのです。
七五三縄と書いて「しめなわ」と読むように、面最後の締めくくりを意味します。また、猿が舞うことで災厄が「去る」ことを願うのです。

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  • wada014 踏みならしの舞
  • wada013 金剣の舞

周辺マップ

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和田・諏訪神社 遠山の霜月祭りは湯立神楽の古い形態を今も伝承しています。年も押し迫った十二月、谷の各所からは神楽歌が聞こえてきます。

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